2010/06/12

トロッコ

336111_001

台湾人の父を亡くした兄弟、

敦(アツシ)と凱(トキ)。

母・夕美子と連れ立って、兄弟は東京から

父のふるさとである台湾の小さな村へ

初の里帰り。遺灰を届けに行く。  

芥川龍之介の短編「トロッコ」を台湾を舞台に映画化。

      

子供の夏休み成長体験を描いた作品は「マルセルのお城」や

「おばあちゃんの家」などお気に入りが多いです。 

ついつい期待しがちで危険なのですが、今回もなかなかの秀作でした。

   

敦は8才、凱は6才。 この二歳の差が子供にはとても大きい。

心の成長差が表情にくっきり表れています。(キャスティングの良さかも)

  

8才の敦は台湾に来てもゲームに夢中で、周りの環境変化に興味を示さない。

母の言う事には逆らいがちで怒られてばかり。

母も夫を失ったばかりで余裕がない。

しかし。

敦は祖父や親戚に会い、違う文化に触れていくうちにどんどん変化をみせる。

336111_004

  

少しのようで大きい、「2才差兄弟」 の違い。

そこが丁寧に描かれていて興味深い。思わずニヤニヤします。

  

弟はまだ体も心も未熟で、新しい体験を好奇心で受け止めるより恐怖が先行。

しかし敦は、口数はなくともその目はしっかり好奇心に満ちている。

道連れにした弟に手を焼かされても辛抱強く面倒みる。

状況によってしっかり自分をコントロールしていく。

ググッと成長する時期。 

ふと、それは自分も8才だった気がする、と思い出した。

336111_002 336111_006    

  

母と敦の関係は変化をみせる。 

「林田山林業文化園区」 の素晴らしい山景とともに

心にジンと来たシーンである。

2009/07/29

ディア・ドクター

011

  

いったい 「資格」 ってなんだろう。

  

「自分」を表明する資格、 運転する資格、 プロとして技を提供する資格、 

人とちがう世界を見る資格、 誰かを戒める資格、 

親になる資格…  生きる資格……   。

  

それが「ある」とか「ない」とかも含めて、あやふやになるような、

いろんな「資格」というものを連想し、それについて 「どうなんだろう」 と

立ち返ることのできる映画に出会いました。

  

かつて無医村だった場所で活躍している唯一人の医者 「伊野」。

村民には愛されキャラで、感謝され、尊敬されている。

ああっ、もう!

この存在を、どうとらえていけばいいんだ!

  

「ダメなものはダメ」 とは言い切れない、なにかモヤッとした

気持ちの残るカンジがたまりません。

アレコレ考えていると

「資格」なんて、結局は、「なんでもない」ものではないか。

ひょっとして 「資格」 は 「死角」 にもなりうるんじゃないか。

なんてことも考えさせられた一本です。

  

ヒューマンで、日本映画のステキな雰囲気いっぱいの

あたたかい、そして、ものすごく悩める映画です。

とってもおすすめ!

2009/03/04

キャラメル

T0006802

レバノン、ベイルートのヘアエステサロンを舞台に、4人の女性

それぞれの悩みにスポットを当てて描いた物語。

サロンのオーナーで、不倫の恋を抱える主人公ラヤール(写真左)を

演じたナディーン・ラバキー。

監督・脚本もこなす多才ぶりにも驚きますが、このナディーン以外の

キャスト全員が素人女優さんだったというのにもとても驚きました。

それくらい、率直で、味わい深く、女性共有の悩みが描かれていたのです。

この映画に登場する女性は、とてもファッショナブルでセクシーだし、強い自信に

あふれているように見えるのですが、一方で、アラブ文化の縛りに苦しんでいる

姿というのも印象的です。

苦しみながらも、痛んでも、立場はまったく違っても、女性同士

支えあい、また強く歩き出す……そんなところが生々しくも力強く描かれていて

「アラブ版SATC」などと表されるのも分かる気がしました。

  

レバノン映画、いいですね。 今後も注目です。

2008/02/26

閉館によせて

はじめて行った映画館はパチンコ屋とゲームセンターの同居する

雑居ビル。 

はねヨメとふたり、映画代を握り締め

ちょっとばかし都会の町を心細い気持ちで歩きました。

  

パチンコの喧騒の中にこじんまり。

銀色の手すりで区切られた小さな窓口でチケットを買い、

薄暗いロビーから赤いビロード張りの映写室へ。

そこからは夢の世界が広がり、何時間いてもかまわない場所…。

 

そんなことを思い出しながら、映画

「オリヲン座からの招待状」を見ました。

  

舞台は昭和32年、と我が思い出よりは古いのですが

登場する映画館の雰囲気はまさにドンピシャ。

シートのすえた香りまでよみがえるようで、気づけば最初から

号泣していました。

 

泣けてくる理由は、現実にもあり。

「あと二日でこの町から映画館がなくなる」

 

気づけばパチンコ映画館は消えており、その後できた

映画館もなくなりました。

この最後の映画館は、昭和の香りなどなく、10年強の

存在でしたが、それでも、もうこの町に映画を見るため

通うことはなくなるのだな…と寂しさがこみあげました。

 

映画館の最終上映に、映画館を守り抜くというお話

「オリヲン座からの招待状」と

シネマ万歳のお話「ニューシネマパラダイス」を

上映してくれた粋なはからいに感謝しつつ

この町での映画ライフに別れを告げました。

2007/10/01

深海

D_3 台湾・高雄から

少し離れた島へ

船で向かう女性、

アユー。

  

何の罪か分からないが、刑務所から出所したばかりの彼女は

知り合いのおばさん(刑務所で知り合った?)を頼って訪ねます。

おばさんは、そっけないカンジですが、心得た様子で

アユーに自分のバーでホステスとして働かせます。

美人のアユーは早々にお金持ちの男性に目をつけられ

愛人契約するのですが、彼女は男性との、ちょっとした

やさしい瞬間を持つことで彼にのめりこんでしまい

感情のままにつきまとってしまうことで心が壊れます。

実は彼女はもともと心の病を持っているのです。

おばさんは不安定な彼女を支えて暮らすうちに、少しずつ

自分も彼女を孤独な生活の支えにしていきます。

しかし、ホステスから、昼の工場作業に変えたアユーはまたも

直情的に男性に走ってしまい、おばさんとの仲も不穏に…。

 

久々にいい感じの台湾映画に出会いました。

あらすじだけ追うと「マッタリしそうだなぁ…」と思うのですが

まったくそんなことはありませんでした。

映像はゆったりして自然な感じですが、壁の色やインテリアなど

ところどころ鮮やかな赤が使われており意味深…。

ホテルの安っぽい紙のスリッパを、ゆっくり丁寧に

はく足元のショットは印象的です。

時々、やるせない瞬間に流れるチャチャのメロディーも

港町の風景にやさしくなじんでました。 

  

「ごめんね、私めいわくだったら出て行くよ」

「ごめんね、自由にしていいから」

失敗したくないがゆえに、アユーの空回る言動。

必死になればなるほど相手の重荷になっていく彼女の姿を

苦笑いで見つめつつも、どこか他人事ではない感覚も

ありました。

孤独で、すべてあきらめたような雰囲気のおばさんも

アユーの世話を焼いたり、彼女が離れていきそうになれば

怒りをあらわします。

愛情をそそいだ相手に、ついつい期待してしまう自分。

勝手に裏切られた気分になり落ち込む自分。

そしてすべて自分のせいだと責める自分。

そういう感覚は、相手が異性とか同性というのは

関係ないのかもしれないなぁ。と感じました。

「イタイ」感情をすんなり見せてくれて後味も悪くない。

繊細な部分をくすぐってくれる素敵な作品です。

2007/05/25

ションヤンの酒家(みせ)

Photo_40 中国・重慶の路地に展開する

昔ながらの屋台街。

「鴨の首の煮込み」

を売りながら、水商売を

続けてきた

屋台の美人女将、ションヤンと、彼女をとりまく人間模様を

ジワリジワリ描き出しています。

  

ションヤンはどうしようもない家族に囲まれています。

兄夫婦は無責任にションヤンに子供をあずけ、そのくせ

しっかりモノのションヤンが煙たい存在です。

息子のように育てた弟は麻薬におぼれ、更正施設にいます。

ションヤンはむくわれない苦労ばかりで孤軍奮闘なのですが

彼女はあくまで高潔でしたたかです。

自分の都合だけでコトを運ぶこともあるし

オンナのズルさも時には方便。

「母が死んで、揚げて食べられるものは何でも揚げて

売って生きてきたの」

本当に美しくて、力強くて、切ない女性で

惚れ惚れしちゃいました。

重たいイメージの映画ですが、ションヤンのキャラクターで

ススーと見れてしまいます。

重慶の、再開発で消え行く予定の、海辺の町並みも

いかにも、ねっとり湿っぽーく、いい雰囲気でした。

男だったら、まったりとションヤンのみせで飲みたいゼ。

というカンジです。

「山の郵便配達」を気に入られた方はぜひ。

2007/01/26

それでもボクはやってない

「Shall we dance?」の周防監督最新作を観てきました。

Photo_36

朝のラッシュ電車でその日、大事な会社面接に向かうはずの

フリーター青年が痴漢の犯人とされてしまいます。

頼りない主人公、田舎から出てきた母親、同じくフリーターの

友達という、最高に頼りないメンツ(でもリアル)、だけど

「やってもいないものを、やってるなんていいたくないよ」

という、至極!当たり前のことを主張するため戦う、お話です。

実は結構長時間の作品であったと、翌日の新聞コラムで知り

本当に驚きました。それほど充実した内容だったと思います。

青年を裁く過程で出会う関係者は、自分の立場を優先します。

日常でさらりと自然にありそうな行為だけに、リアルすぎて

「うーん」とうなってしまいました。

  被害者は被害を受けた恐怖の感情から

  警察は毎日うんざりするほど起こる案件に疑心暗鬼から

  裁判官のプライドと自己利益の追求から

…などなど、言葉にすると難しいカンジが、丁寧な脚本と

繊細な演技で絶妙に表現されていました。

上映後、そばのおばさんが「息子に見せなきゃ」とか

「ダンナだったらアタシは見捨てちゃうなぁ~」とか

「敗訴用のホケンとかあったらいいのに」とか話しているのを

聞いて、冗談まじりながら、みなさん自分のことのように

受け取ったのだなぁと感じました。

では私は???

とりあえず「知る」ということだけでも大事だと思うことに。

掴まったら99.9%有罪などという異常な国家に住んでいる

というのは知りませんでしたから…。

2006/11/17

間宮兄弟

30すぎても、ふたりで仲良く同居している、間宮兄弟。

Photo_34

いいトシした男兄弟が、夜には並んで野球のスコアをつけて

もりあがり、休日には一緒にサンポし、仲良く布団を並べて

昼寝する。

そんな兄弟、ちょっと不気味な気がしてしまいますが、

よくよく見ていると、ちがうのです。

間宮兄弟は、ふたりともキチンとした社会人です。

仕事をまじめにこなし、家でもキチンと家事をこなします。

たくさんの趣味(しかもセンスもよい)にいそしみ、

子供心も忘れない。

実は、理想的な男子!だったりするのです。

気の合う兄弟で、楽しく過ごす日々。

ただ、足りないのは女性関係のみ…。

そのことに積極的にとりくみ始めてから、間宮兄弟の

生活に少し変化が出てきます。

恋愛だけは、キチンと、楽しくいくとは限らない…。

ほのぼのとした笑いの中に、どこか、そらおそろしい

現代の感覚が隠されているような気もします。

楽しくて、平和で、それでいいじゃないか。

そう思わせつつ、あるとき、間宮兄のクチから飛び出す

「みんな複雑なのが、うらやましい」  

という言葉にドッキリ。

切なくて、ちょっと身につまされるのでした。

2006/11/16

ファミリー

韓国の下町。

刑に服していた娘が、三年ぶりに家族のもとに帰ってきた。

姉は留学中と聞いていた幼い弟は、無邪気に喜び迎える。

だが、年老いた父の態度は冷たかった。

Dsc01516

娘を見放したような態度をとる父と、誇るべき仕事を放棄し、

結果、家庭を壊した父をにくむ娘の対立は、冒頭から

救いがたい様相をしています。

Dsc01519しかし、少しずつほどけていく誤解。

隠れていたお互いへの想いが

ジワジワとにじみ出していく様子は

実にアジアらしい、親子関係を

うつしとっている印象です。

 

ここまでハードな状況でなくとも、なぜか、近すぎる関係では

肝心なことが伝わらず、切ない展開になることが

少なくないような気がします。

見終わってすぐは、エピソードなど、パーツパーツの

つながりが、少しわかりにくい印象でしたが、

二、三日後にじんわり後引くような物語だと思います。

演出過剰でない突き放したカンジが、昔の韓国映画を

思い起こさせました。

2006/10/30

かもめ食堂

フィンランド、ヘルシンキ。

お客がなかなかやって来ない食堂を、一人で営む「サチエ」。

彼女の元にそれぞれ訪れた「ミドリ」と「マサコ」が

食堂を手伝い始め、少しずつ変化が起きていく。

Dsc01431

かいこ大好きテイストです。

淡々としていながらも、行間を読みたくなる会話と

おいしそうな料理、しゃれた小道具と、味のある脇役たち。

それがそろって、なんともキモチの良い時間でした。

Dsc01429

ただ。

サチエさんがフィンランドで、なぜか和食の食堂を始めた

「いわれ」や、それぞれの人物の生きてきた「背景」などの

詳しい説明は、冗談か本気か、スルリスルリかわされていて

あまり描かれていません。

「ここにいよう」と決める経緯なども、ふんわりと

ファンタジーにかわされてしまいました。

でもそんな風に軽やかに表現されているのが、また

心地いいのです。

「どうしてこうなったか」ということよりも

登場人物すべての現在状態 = 「さびしい」。

ということがおさえられていれば良いのです。

シンプルな分、ポツリポツリ出てくる名言が

心に残りました。

「どこにいても、寂しいものは寂しいのです」

より以前の記事一覧